テーマ別経営ノウハウ22

 

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「勝てる場の実践」のための商品力・サービス力の強化
 26.エース級を投入して仕入でコストカットを実現する
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仕入れはコストカットの中でも最も重要な位置をしめています。なぜなら、
原材料費や商品仕入額は最もコストウェイトの高い費用であるからです。


卸売業や小売業では商品仕入額は売上高に対して60%から90%の
ウェイトを占めています。また、製造業であれば原材料費は40%から
70%ぐらいまで占めています。


人件費がいくら高いといっても、原材料費や商品仕入額にはかないませ
ん。


このように、コストウェイトが非常に高いのが原材料や商品の仕入れなの
ですが、一方、仕入れは比較的少人数で運営ができます。しかも優秀な
バイヤーであれば、粗利益率の2〜3%はすぐに仕入れで改善すること
が可能です。


価格競争が激しくお客様からの値下げ要請が厳しい今日、売り上げで利
益をつくるのは大変です。従って、利益は仕入れで創らなければなりませ
ん。


ところが、現状を見ると仕入れに注力している会社は少数にとどまります。
特に中小企業ではそうです。


このような会社では、在庫管理がいい加減で実在庫を正確に把握しない
まま仕入れを行ったり、仕入れ担当者が不明確で複数の人がお互いの
連携もなく仕入れを行っていたり、さらに、従来の取引先と気心が知れて
いるということで、仕入価格が高いにもかかわらず取引を続けていること
もあります。


一方、売上に関してはどこの会社も非常に力を入れています。そのため、
営業担当者は何人もいます。


会社の利益貢献度からいえば、仕入れは決して売上に引けをとるもので
はありません。それにもかかわらず、仕入れには専任担当者すら置かず、
営業や生産の業務と兼任で、片手間に行っている場合が多いのです。


これまで多くの高収益企業を見てきましたが、いい会社はほとんど例外
なく仕入れが強いといえます。


このような会社は、営業に比べ仕入れは少数の担当者で運営すること
ができ(通常、1人か2人しっかりとした人が核になれば十分です)、し
かもその少数のスタッフで営業と変わらないほどの利益を出せることを
知っています。


このように、仕入は利益貢献度が非常に高いため、担当者はその会社
のエース級の人材を投入すべきです。


優秀な仕入担当者一人で営業担当者の何人分もの利益を出すことが可
能となるからです。


仕入れ担当者は誰でもができる仕事ではありません。なぜなら、仕入れ
は次のように、経営全般をバランスよく理解している人材でなければでき
ないからです。


●今後の販売動向を正確に読んで仕入れを行わなければならない
営業から言われたものを機械的に仕入れるだけでは利益を出すことがで
きません。仕入れ担当者が自らどんな商品が売れるのかを把握して仕入
れを行う能力が必要です。
つまり、仕入担当者は目利きでなければなりません。


●原材料、商品の相場観を持ち、タイムリーな仕入れを行わなければな
 らない
仕入れ品の価格はいつも一定ではありません。仕入で利益を得るために
は、仕入れ品の相場観を持ち、タイムリーな仕入を行うことが必要です。
例えば、今後相場が上昇傾向にあると読めば、品物は安い間に多く仕入
れる必要があります。逆に、相場が下げ傾向のときは、品物を大量に保
有せず、スポット的に仕入れるべきです。


●在庫を正確に把握し、資金繰りを中心とした会社のお金の流れを理解
 していなければならない
仕入れに失敗すると売れ残りが生じて在庫過多になったり、資金繰り難
に直面します。従って、仕入れ担当者は、在庫を正確に把握し、資金繰
りを中心とした会社のお金の流れを理解していなければなりません。


●強いコスト意識を持ってタフな交渉をしなければならない
仕入先に値下げ要求をするのは嫌な事です。まして、長年懇意にしてい
る仕入先に対しては、なかなか言いづらいものです。
そんな時でも、会社の利益のためにあえて厳しい要求をしなければなり
ません。
そのためには、自分は悪者になっても構わないという覚悟もいります。
しかも、そのような厳しい要求をしながら、うまく仕入先と付き合ってい
く対人能力も必要です。
そのような能力を持った人が、強いコスト意識を持って、タフな交渉を仕
入先としなければなりません。


仕入で利益をあげるためには、以上のような能力を持った人が必要です
が、そのような人は会社ではエース級の人になると思います。


最後に、仕入担当者が効果的なコストカットを行うためには、次のような
活動を継続して粘り強く実行することが必要です。

◆定期的に価格交渉を行い、価格を見直す
◆仕入先を数社に絞り、1社当たり購入量を増やすことにより、仕入れ
 単価を下げる
◆価格交渉時には相見積りをとる
◆新規仕入先開拓を絶えず行う
◆定期的に仕入先を見直す
◆VE(バリュー・エンジニアリング)手法を取り入れ、材料・部品の標準化や、
 より低コストの代替品の導入を検討する(ただし、これは仕入れ担当
 者だけの仕事ではありません)


以上の作業を通して、在庫目標を設定し在庫の削減を図り、さらに、仕
入れの段階で安く仕入れ、コストカットを実現していくことになります。


そして、最後の課題として、在庫品目の削減に取り組むことが必要に
なります。


在庫品目が増えると、当然、在庫金額・在庫量ともに増えます。また、
そのための事務管理も煩雑になり、目に見えない出費がかさむことに
なります。


在庫品目を減らすためには、定期的に廃番商品の見直しを行わなけれ
ばなりません。特に、Cランク品目は、パレート分析に基づく在庫管理
のところで説明したように、品目数が多いわりに在庫金額ウェイトが低
いため、思い切って廃番の決断をする必要があります。


また、新商品を投入する際、廃番する品目がなければ、在庫は増え続
けます。新商品を投入する時には、積極的にスクラップ・アンド・ビルドを
実施しなければなりません。

 

 


 

 

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お客様の心をつかむ販売力の強化法
 1.マーケティングとは?
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皆様もご存知のとおり、今は「モノあまり時代」。世間には似たり寄ったり
の商品やサービスがウンザリするほど氾濫しています。


我々は今、モノを売るのが非常に難しい時代に直面しています。


いくらいい商品をつくっても、簡単にヒット商品は生まれません。他の商品
にはない特徴ある商品コンセプトを、お客様に明確に伝える販売ノウハウ
を持つことが必要です。


そのためにはマーケティングを強化しなければなりません。


では、マーケティングとは何なのでしょうか。ここではまず、マーケティング
の意味や構造から考えてみたいと思います。


マーケティングとは、「生産した物をいかにうまく顧客に販売すること」を考
えることでしょうか? それとも、「どうすれば売上目標を達成できるのか」を
考えることでしょうか?


マーケティングとは何か?


詳しくは次回に説明をしますが、その前に皆さんに簡単な質問をさせていた
だきたいと思います。


まず、1000年前のほとんど技術が発展していない時代を想像していただ
いて、マーケティングの構造を考えていただきます。


1000年前という社会構造がシンプルな時代を背景とするのは、今の時代
を背景にマーケティングを考えると、技術や経済構造が複雑になりすぎて、
かえって分かりにくくなるからです。


では話を進めますが、ここでは、
「道端にころがっている、単なる “石” を売るためにはどうすればいいのか」
をテーマにします。


もちろんこれは架空の話です。それでは皆さん、一緒に考えてください。


場面は、今から1000年前、インカ帝国が栄える前のアメリカ大陸。群雄割
拠の戦乱が続き、国土は荒廃していました。


現在のペルーの地にマサイという1人の商人がいました。この地では、硬くて
なかなか割れず、長期間風雨にさらされても変色せず、しかも大きさがほぼ
均等な石が多数採掘できました。


皆さんなら、この道端にころがっている「石」を売るために、どのようなマーケ
ティングをされますか?


次回は、このお話を展開させながら、「マーケティングとは何か?」を皆さんと
一緒に考えてみたいと思います。

 

 

 

 


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お客様の心をつかむ販売力の強化法
2.マーケティングってこんなにシンプル! 
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前回は、「マーケティングとは何か?」というテーマに関して、皆さんに次の
ような事例を出して質問をしました。


場面は、今から1000年前、インカ帝国が栄える前のアメリカ大陸。群雄割
拠の戦乱が続き、国土は荒廃していました。


現在のペルーの地にマサイという1人の商人がいました。この地では、硬くて
なかなか割れず、長期間風雨にさらされても変色せず、しかも大きさがほぼ
均等な石が多数採掘できました。


皆さんなら、この道端にころがっている「石」を売るために、どのようなマーケ
ティングをされますか?


今回は、この事例を展開させながら、
「マーケティングとは何か?」
皆さんと一緒に考えたいと思います。


では始めます。


マサイは、常々、この石を使って何か商いができないか考えていました。


そんな思いがマサイの潜在意識を刺激したのでしょう。ある時、ふとインスピ
レーションが涌きました。


「そうだ! この石を武器として売ろう。硬くてなかなか割れず、大きさもほぼ同
じで加工の手間隙もかからない。武器としてはうってつけだ。これは大儲けが
できるかもしれないぞ。」


手始めにマサイはアステサ国におもむき、石の販売を始めました。


期待通り、石は飛ぶように売れました。アステサ国では武器に適した良質な石
が採れなかったからです。商いは順調に拡大し、マサイは多くの者を雇うように
なりました。


しかし、事業は成功したものの、雇われ人は次々と辞め、人の入れ替わりが絶
え間なくありました。去って行った雇われ人は、口をそろえてこう言ったのです。
「人の殺りくに手を貸すような商いはしたくない」


マサイ自身も、戦争を煽るような商いには、何かふに落ちないものを感じていま
した。

 


〈質問1〉そこで質問です。
マサイがこのような気持ちになるのは、経営の観点から見て、何に問題がある
のでしょうか?

 


経営には、「自分が何の事業を行いたいのか」、あるいは「社員の心を一つに
まとめるための、事業の大義名分は何なのか」をはっきりすることが重要です。
これが「企業理念」です。


マサイは明確な企業理念を持たずに、ただお金がほしいという一心で事業を
始めたから、心に迷いが生じたのです。

 


(話の続き)

マサイは日ごろから、「何か人の役に立てるような仕事をしたい」、と思ってい
ました。お金はほしいけれど、戦争はもうイヤだと思っていました。


そこで、思い切って、「武器の販売はもう止めよう!」と決心しました。


しかし、何の仕事をすればいいのか? 


ふと、まわりを見渡すと、あたりは荒廃の一面。人々は住む家もなく路頭に迷っ
ています。この光景を見て、マサイには一つのインスピレーションが湧き上がり
ました。


「そうだ! これからは戦争で荒廃した都市を建て直すことが必要だ。人々が安
心して住める住居が必要なのだ。 
“人々が安心して住める住居・・・” 
これはいい! 
これからはこれを私の事業にしょう。」


それを契機にマサイは
『都市の再構築と住宅の建設により、人々に安心と安らぎを提供する』
という企業理念を確立することができました。


しかし、これまで武器の販売しか知らなかったマサイにとって、どのような方法で
企業理念を実現すればいいのか、検討がつきません。

 


〈質問2〉あなたがマサイなら、どのような事業により企業理念を実現しますか?

 


企業理念が確立すると、どのような事業を通してその企業理念を実現するかが
問題となります。つまり、「事業定義」を明確にしなければなりません。


そのためには、自社を取り巻く内外環境を分析し、自社の“強み”を“伸びる市場”
に適応させなければなりません。さらに、その市場でいかなる戦略でもって戦う
のか“市場戦略”と、誰を顧客とするのか“市場目標”を設定することが必要です。

 


(話の続き)

マサイは、いろいろなことに思いをめぐらせた末に、次のようなことが脳裏に浮か
びました。


「これまで武器として取り扱っていた石は、じょうぶで、長期間風雨にさらされても
変色しない。しかも大きさがほぼ均等だ。それなら、この石を建物の外壁に利用
すればいいのだ! 都市の建物はほとんど修理が必要だし、この石を必要とする
人は大勢存在するはずだ。」


マサイは、良質な石という「強み」を、建物利用という「伸びる市場」に適応させた
のです。


そして、自らの事業を“建物建築業”という場に設定したのです(事業定義)。その
事業を通して、『都市の再構築と住宅の建設により、人々に安心と安らぎを提供す
る』という企業理念を実現しようと決心しました。


“建物建築業”として事業を営む決心ができたものの、誰に建物を販売すればい
いのか、マサイは迷ってしまいました。


人々に安心できる住宅で暮らしてもらいたいと思っても、長い戦乱で疲れ果てた
国民には、住宅を購入する費用がないからです。


マサイには誰に売ればいいのか、市場目標が見出せないのです。


そのことで何日間も思いを巡らせ、いろいろな人に相談もしました。


ある日、ヤシンという人に相談を持ちかけました。すると彼はマサイにこんなアド
バイスをしました。


「国土が荒廃すれば、住民は働くことができません。すると当然国家も税が徴
収できなくなります。国を強くするためには、人々に住居を与え、安定した職を
与えることが必要です。」


マサイはこの言葉にピンときました。


「荒れ果てた国家を建て直すためには、民衆が安心して暮らせる住宅を建設
することが必要だ。そうだ!アステサ国の国王には、武器販売のことでこれま
で何回も会っている。国王に国家再建のための住宅建設を進言しよう。」


顧客を国王にすることで、マサイの市場目標の悩みは解決しました。


ここで、市場戦略についてですが、“建物建築業”という事業定義と“国王”と
いう市場目標を設定しても、他の業者との競争に打ち勝つにはどうすればいい
かが大きな問題となります。


建物建築を営む業者は他に無数にいるからです。


彼らに打ち勝つためには、十分勝算のある事業でなければなりません。つま
り、自社の「勝ちパターン」をイメージできなければなりません。


マサイは、じょうぶで、長期間風雨にさらされても変色しない、しかも大きさが
ほぼ均等な石なら、他の業者と戦っても十分勝てるであろうと踏んだのです。


この点を差別化のポイントとする市場戦略を構築したのです。

 


〈質問3〉マサイは、新事業を推進するにあたって、「企業理念」「事業定義」
     「市場戦略」「市場目標」という難問を解決しました。
     さて、あなたなら次に、経営上のどのような課題に取り組みますか。

 


上にあげた4つの問題をクリアーすれば、ターゲットとなった顧客に対して、
顧客の要望に応じた商品を、いくらで、どのようなルートで、しかもどのような
手段を用いて商品をアピールするかを決定しなければなりません。


つまり、
「商品政策」「価格政策」「販路政策」「販促政策」
を明確にしなければならないのです。

 


(話の続き)

国王に住宅建設を進言するにしても、国土を荒廃から救うには、早急に住宅
を建設しなければなりません。しかも、国の費用で多くの人に住宅を提供す
るためには、費用は必要最小限に抑える必要があります。


マサイは、
「良質な石でできた堅固な住宅であるが、早く建てられる住宅で、しかも安く
提供できる住宅でなければ、国王に満足していただくことはできない。」
と判断しました。


つまりマサイは商品政策として「早く建てられる住宅」、価格政策として「安
く提供できる住宅」を選択したのです。


また、販路政策については、
「国王に対しては、以前、石の武器の販売に関して、何度か謁見している。
だから、他の人を介する必要はない。直接国王に会って進言しよう!」
と考えました。

つまり他人(代理店)を経由しない直販体制を採ったのです。


さらに、国王にどのようにアピールすればよいのか。マサイは、次のような
「販促政策」を思いつきました。


「国中の大工が集まって造っても、早くて安い家を民衆一人ひとりに供給
することは不可能だ。それなら、国中の大工を組織し、彼らの指導のもとに、
住宅の提供を受ける民衆が労働者となって、自らが住む家を造くっていけ
ばいい。
国王に“住宅建設大運動”を推進することを進言し、それによって早くて安
く造れる家を建設していこう!」


以上の「商品政策」「価格政策」「販路政策」「販促政策」により、マサイの
進言は国王に受け入れられました。


国民は安心して暮らせる住宅を提供され、一生懸命仕事に励んだため、
国家は再び隆盛を取り戻しました。

 


以上の事例を通して、マーケティングというものの、およそのイメージはつ
かんで頂けたでしょうか。


この事例の内容を体系的にまとめましょう。


マーケティングとは、ただ単に商品を売ることではなく、顧客が顕在的・潜
在的に欲する商品やサービスを開発・生産し、より効率的・効果的に顧客
に商品やサービスを提供することによって、顧客に喜びと満足を与えるた
めの企業活動なのです。


マーケティングという行為は企業の一部分のものではありません。それは
企業理念を実現するための企業全体の行為なのです。


そしてそれらの活動は体系的に結びついています。各々の機能が個別に
強化されても、それが関連性を持って有機的に機能しなければ意味をなさ
ないのです。


またマーケティング活動は、企業の環境に沿ったものであると同時に、有
形、無形で存在する自社の経営資源と深く関連しています。


このような考え方で、マーケティング戦略を構築するためには、まず、

●企業理念

を確定しなければなりません。次に、

●事業定義
●市場目標
●市場戦略

を確定します。これらを包括して「戦略ドメイン」と呼びます。

さらに、

●商品政策
●価格政策
●販路政策
●販促政策

を展開します。これら4つのマーケティング活動を、標的市場に対して最適な
形で組み合わせ、統合化していくことを「マーケティング・ミックス」といいます。

そして、これらを実行、管理する体制として、

●管理システム

があります。


いかがでしょうか。
マーケティングはこんなシンプルな構造で成り立っているのです。

 

 

 

 

 

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お客様の心をつかむ販売力の強化法
3.価格政策 
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マーケティング戦略を構築するためには、まず、

●企業理念

を確定しなければなりません。次に、

●事業定義
●市場目標
●市場戦略

を確定します。これらを包括して「戦略ドメイン」と呼びます。

さらに、

●商品政策
●価格政策
●販路政策
●販促政策

を展開します。これら4つのマーケティング活動を、標的市場に対して最適な
形で組み合わせ、統合化していくことを「マーケティング・ミックス」といいます。

そして、これらを実行、管理する体制として、

●管理システム

があります。


今回は、この中で、価格政策についてお話をします。


最近のマーケットは、ほとんどが成熟化しており、激しい価格競争が繰り広げ
られています。しかも、インターネットの普及により、流通経路が短縮化すると
ともに、競争相手は国内企業のみならず、国外企業も対象になってきました。


このような状況の中では、価格政策が極めて重要になってきます。


例えば、世界中から安い原材料や商品を購入して低価格で販売する戦略を採
るのか、あるいは、自社しかない高付加価値製品やサービスをお客様に高価格
で提供する戦略を採るのか、価格政策は、それぞれの企業が判断すべき戦略
の中で、最も重要な要素の1つです。


価格の決定は、費用志向か競争志向か需要志向かの3つの観点から、次のよ
うに分類できます。


1.費用志向の価格決定

◆マージン率によるコストプラス方式
製造原価に一定額または一定率のマージンを加えて販売価格とするものです。
マージン額やマージン率は過去の実績や業界の慣習などを参考に決定されま
す。この価格決定方式はメーカー向きの方式といえます。


◆マークアップ率によるコストプラス方式
マージン率によるコストプラス方式はメーカー向きであるのに対して、流通業で
はマークアップという方式がとられる場合もあります。

例えば、製造原価(仕入原価)80万円の製品(商品)を100万円で販売した場
合、

 マージン率=(100万円−80万円)÷100万円=20%

になりますが、

 マークアップ率=(100万円−80万円)÷80万円=25%
となるわけです。

マージン率は販売価格基準、マークアップ率は仕入原価基準ということができ
ます。


マージン率によるにせよ、マークアップ率によるにせよ、コストプラス方式は、
価格設定の手続きが簡単で、安定した利益の確保が可能となります。


しかし、顧客の需要や競争状況を無視しているという問題点があります。


2.競争志向の価格決定

◆実勢価格方式
競争企業の価格を意識して、自社の価格をそれに近づけて決定する方式で
す。自社の費用や需要はあまり重視されません。

◆競争価格方式
競争企業よりも低価格を設定し、マーケットシェアの拡大を図ろうとする価格
設定方式です。


3.需要志向の価格決定

◆知覚価値方式
顧客の商品への知覚価値に基づいた価格決定方式で、
「この製品に対して、顧客はいくらくらいまでなら支払うだろうか」
という点から価格を設定します。

◆ターゲットコスト設計システム
これは、まず潜在的な顧客に最もアピールできる製品価格(ターゲット価格)
を決定するところから始まります。そして、ターゲット価格が製品のターゲット
製造コストを決定し、設計から製作、原材料や部品の調達までを、すべてタ
ーゲットコストの範囲内で押さえることを目標に諸活動が遂行されます。


今日のように、ほとんどの市場が飽和化している状況では、お客様のニーズ
第一で価格を決定する必要があります。


その意味では、戦略的な観点から、まず潜在的なお客様に最もアピールで
きる価格(ターゲット価格)を決定するところから始めなければなりません。


そして、ターゲット価格が製品のターゲット製造コストを決定し、設計から製作、
原材料や部品の調達までを、すべてターゲットコストの範囲内で押えることを
目標に諸活動が遂行されるべきです。


お客様に満足していただける製品やサービスを提供するためには、ターゲット
コスト設計システムの考え方を取り入れることが最も大切だと思います。

 

 

 

 

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お客様の心をつかむ販売力の強化法
4.メーカーの販路政策 
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分業が進んだ現代社会では、生産と消費との間に分離現象が生じ、メー
カー(Maker)と消費者(Consumer)との間には卸売業(Wholesaler)や小
売業(Retailer)などが介在しています。


この生産と消費の隔たりをつなぎ、製造業者が生産した製品を消費者の
もとへ届ける仕組みを「流通」といいます。


近時はインターネットの普及により流通に革命が起こりました。消費者が
直接メーカーから製品を購入できたり、海外から様々な物品が調達できる
ようになりました。


このような大変革の中にあって、時代に乗り遅れた従来通りの流通ルート
にしがみついていては、企業の生き残りははかれません。いかに早く、安
くお客様に商品・サービスを提供できるかが重要なポイントになっています。


以下では、メーカー、卸売業、小売業の流通政策上の課題を取り上げて説
明します。


今回はまず、メーカーの流通政策の課題について、説明をします。
 

【メーカーの流通政策の課題】

市場の成長期には売ることよりも作ることが重視されたため、メーカーが市
場の主導権を握っていました。


しかし、市場が成熟化し物あまりの時代になると、作ることよりも売るための
マーケティングが重要視されるようになりました。


従って、市場の主導権もメーカーから消費者に最も近い小売業に移行しつつ
あります。


このような状況の中で、メーカーが抱えている課題には以下のものがありま
す。


1.製品開発力の強化

メーカーで最も大事なのはいうまでもなく製品開発力です。ところが、この開
発力が低下しています。


成熟市場下では、消費者などエンドユーザーのニーズを的確につかんで商品
開発をしなければ、顧客の満足は得られません。しかし、販売を卸売業に頼り
っきりのメーカーが多く、エンドユーザーの声を直接に聴く努力を怠っているの
です。


卸経由の販売体制をとっている場合でも、卸の営業パーソンとの同行営業の
機会を増やすか直接小売店を訪問し、顧客の生の声を聴くことが極めて重要
です。


ただ、現状ではメーカーとの同行営業や、メーカーの営業パーソンが直接小売
店へ訪問することを好ましく思わない卸売業者も少なくありません。彼らの販売
方針に反する営業活動をメーカーが勝手に行うことや、いわゆる「中抜き」で卸
を飛ばしてメーカーが小売業と直接取引きを行うことを警戒しているからです。


しかし、メーカーサイドからすれば、卸に遠慮をして顧客のニーズ把握を怠って
いると製品開発力がますます低下し、自らを死に追いやることもあります。


メーカー側の事情を卸に理解してもらう努力を続け、彼らとの同行営業や直接小
売店へ訪問する営業活動を行わなければなりません。


卸側にしても、メーカーが積極的に小売店へ営業することは自社の業績向上に
つながります。ですから、かたくなにメーカーの要望を拒否すべきではありません。


2.営業力の強化

製品開発力と同様に卸に頼りきった販売では、売上アップは望めません。


メーカーがこの商品を売りたいと思っても、卸はその通りには売ってくれません。
卸は卸としての販売政策があるため、特定メーカーの製品のみを販売することが
できないからです。


従って、この場合でもやはり、卸との同行営業か小売店への直接訪問を増やし、
積極的にみずからの製品を販売することが重要です。


ただし、注意しなければならないのは、すべての小売店を訪問するのではなく、
売り上げの大きい主要な小売店を訪問し、自社製品のファンになって頂くことです。


メーカーは営業効率を考え、主要な小売店での売上アップをはかることによって、
卸に対する存在感を高めていくべきです。小規模で売上の少ない小売店への訪
問は効率が悪いため、原則として卸に任せるべきです。


そして、小売店で捉えたニーズをふまえて卸へ製品提案を行ったり、販促提案を
行えば、卸との信頼関係が強化され、自社製品を優先的に販売してくれるように
なります。


3.流通経路の短縮

1、2では、卸経由で販売する場合のメーカーの流通課題を取り上げました。しか
し、メーカーの製品開発力や営業力の強化は、流通経路を短縮し小売と直取引
を開始するか、あるいはインターネットやDMによるエンドユーザーとの通信販売
を行うことにより、さらに強化されます。


ただし、その際の問題点として、以下のような諸点をあげることができます。
(1)小売との直取引のための営業人員の補強が必要になり人件費が増加する
(2)これまで取引をしていた卸が反発する
(3)通信販売のノウハウがない


これらの問題点を解消し、直取引に円滑に移行するためには、

a.一挙に直取引に移行するのではなく、エリアを限定して直取引を開始する
 (例えば、近隣エリアだけ直取引に移行し、その他のエリアは卸経由にする)
b.従来の卸取引を継続しながら、補強的に通信販売等を行う。
c.卸と対立関係になるのではなく、製品開発のための顧客情報の収集手段
 として、アンテナショップを開設する。

等の方法があります。