テーマ別経営ノウハウ32

■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

経営のバックボーンとなる人事評価制度

4.人事評価制度の策定過程に社員を参加させる

■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

 

人事評価制度は会社運営の骨格を形成する制度です。従って、その策定

過程には十分な注意を払わなければなりません。

 

 

制度内容が経営側からの押しつけであったり、評価項目がどこの会社に

も当てはまる一般的なものばかりであれば、社員は本気で評価項目の要求

事項を実行しようとは思わないでしょう。

 

 

社員に、自分たちの人事評価制度という意識を持ってもらわなければなり

ません。

 

 

そのためには、制度策定に当たって彼らの意思を反映させ、

「自分たちがつくった人事評価制度」

という意識を醸成することが必要になります。

 

 

ただし、人事評価制度は経営政策上、極めて重要な制度です。これをすべて

社員の意思に任せて作成することはもちろんできません。

 

 

従って、社員がつくった方がいい部分は、彼らに任せ、経営側でつくったほ

うがいい部分は経営側でつくるべきです。

 

 

人事評価表の「技能・知識・情意項目」は、社員がつくった方がいいものが

できます。現場に関することは、現場の人が一番よく知っているからです。

 

 

そして、彼らがつくったものをベースにして、経営側でどうしても必要だと

思う項目があれば追加・修正するなど、経営側の意思を反映させればいいと

思います。

 

その他の項目に関しては、「業績達成項目」は社員の仕事の成果を問うもの

です。また、「経営方針達成項目」は、経営計画で決められているものの中

から重点テーマを抽出した項目です。

 

 

これらの項目の策定には重要な経営判断が必要です。従って、これらは経営

側で作成すべき項目になります。

 

 

しかし、一方的に経営側で作成して、その実行を社員に押しつけても、彼ら

は納得しないでしょう。

 

 

私は、これらの項目に関しても、まずは、社員側でたたき台をつくってもら

うようにしています。そして、それをベースに経営側で検討し、最終判断を

下すします。

 

 

このように、社員と経営者の意思を融合させながら人事評価表を作成してい

くに当っては、「人事評価表策定プロジェクト」を発足させて進めるがいいと

思います。

 

 

メンバーは、担当役員、各部門長および副部門長、それに一般社員も数名参

加してもらう方がいいでしょう。また、労働組合がある場合には、組合代表

の参加も必要です。

 

 

プロジェクト方式では、定期的な会合の中で経営側と社員側が意思疎通をは

かりながら作業を進めることが可能になります。

  

 

 

■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

経営のバックボーンとなる人事評価制度

5.職種・等級の決定

■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

 

人事評価を行う場合、対象者の経験や技能レベル、あるいは職種によ

って、評価すべき内容が異なってきます。そこで、評価表を等級と職

種をベースに分類して作成することが必要になります。

 

 

まず、等級の決定ですが、何等級にするのか、各等級のおもな役割は

何かを明らかにしなければなりません。

 

 

これは、会社の規模や組織、階層の複雑性によって決まりますが、例

として、6等級までの等級制を採用した場合の「等級別職務の役割」

をまとめました。

 

 

【等級別 職務の役割】

6級   

対応役職:事業部長

主な役割:統率・開発   

 会社の経営方針に基づき事業部の執行方針を定め、事業部の業務全

 般を統括・管理する

 

5級

対応役職:部長・次長

主な役割:上級管理・企画立案

 事業部の基本方針に基づき部の執行方針を定め、部の業務全般を統

 括・管理する

 

4級

対応役職:課長・課長代理

主な役割:管理・企画立案

 部の基本方針に基づき課の運営方針を定める。課の実務上の業務に

 ついて責任を負う。

 

3級

対応役職:上級社員(係長・主任)

主な役割:判断・指導   

 日常の業務運営の具体的計画を立て、複雑・困難な業務を行う。業

 務運営に関し部下を指導監督する。

 

2級

対応役職:中級社員

主な役割:熟練定型     

 熟練定型的な業務を独自の判断によって処理し、比較的複雑・困難

 な業務を行う。

 

1級

対応役職:初級社員

主な役割:定型・補助

 指示または定められた手順に従って、定型的な日常業務を行う。

 

 

このように等級別職務の役割を明らかにすれば、次は等級と職種を組

み合わせて、何種類の人事評価表を作らなければならないかを決定し

ます。

 

 

そのために、次のような「職種・等級一覧表」を作成します。

 

 

【職種・等級一覧表】

 

○は人事評価表を作成する職種・等級

 

等級    総務・経理      生産   営業    開発    購買

6級      ○          ○     ○      ○      ○

5級      ○          ○     ○      ○      ○

4級      ○          ○     ○      ○      ○

3級      ○          ○     ○      ○      ○

2級      ○           ○     ○             

1級      ○          ○     ○             

 

 

 

 

■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

経営のバックボーンとなる人事評価制度

6.“業務内容整理アンケート”をとる

■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

 

人事評価表を作成する職種・等級が決まると、次は、現状の業務内容

を整理しなければなりません。

 

 

これも、職種別、等級別に整理することが必要です。

 

 

そのためには、社員全員に「業務内容整理アンケート」を配布し、彼

らの業務内容を自ら整理してもらいます。

 

 

社員全員にアンケートを記入してもらうのは、彼らに制度の作成に対

する参加の意識を持ってもらうためでもあります。

 

 

業務内容整理アンケートは、次のようなものになります。

 

 

 

【業務内容整理アンケート】

●職種:店舗販売       

●等級:3級

●氏名:鈴木 裕子

●ほぼ毎日行う業務

 1.店舗の清掃       

   ・店内(売り場・倉庫)の清掃

   ・駐車場の清掃

 2.商品の陳列       

   ・商品の補充

   ・見やすい陳列の工夫

   ・値札、POPの取り付け

 3.商品の発注       

   ・担当売り場の在庫チェック

   ・商品の発注

   ・発注商品の検品

 4.接客     

   ・商品説明

   ・クレーム対応

   ・レジ業務

 5.販促物の作成     

   ・POPの作成

   ・値札の作成

●月・年単位で行う業務 

 1.販売計画の作成   

   ・月間、年間販売計画の作成

 2.販促企画 

   ・新商品の導入

   ・陳列、POPなどの売場企画

   ・イベント企画

 3.販売会議 

   ・月単位の業績チェックと次月対策

               

               

 

「業務内容整理アンケート」から、職種・等級別に業務内容を整理しま

す。

 

 

この作業を通して、わが社の社員は日頃どのような仕事をしているのかが

明確になり、業務内容に関する理解が深まります。

 

 

業務内容が整理できれば、その業務がその等級や職種にふさわしい業務か

どうかを判断します。そして、等級や職種にふさわしい業務を明確にし、

それをベースに人事評価項目を選定します。

 

 

 

■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

経営のバックボーンとなる人事評価制度

7.職種・等級別 評価項目一覧表

■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

 

「業務内容整理アンケート」から、職種・等級別に業務内容を整理す

ると、わが社の社員は日頃どのような仕事をしているのかが明確にな

り、業務内容に関する理解が深まります。

 

 

業務内容が整理できれば、その業務がその等級や職種にふさわしい業

務かどうかを判断します。

 

 

そして、等級や職種にふさわしい業務を明確にし、それをベースに人

事評価項目を選定します。

 

 

下表の「職種・等級別 評価項目一覧表」は、選定した評価項目を一覧

にしたものです。

 

 

表では項目を「業績達成項目」、「経営方針達成項目」、「技能、知識、

情意項目」に分類しています。

 

 

【職種・等級別 評価項目一覧表】

●職種:店舗販売       

●等級:3級

●アンケートを整理した業務内容

 ・販売計画の作成             

 ・販促企画の立案             

 ・月次単位の業績チェック             

 ・店舗内外の清掃             

 ・商品の陳列         

 ・販促物の作成               

 ・在庫管理           

 ・商品の発注         

 ・お客様への接客             

 ・商品説明             

 ・クレーム対応               

 ・売れ筋情報の収集           

 ・部下育成           

 ・パート・アルバイト教育             

●人事評価項目(アンケートを整理した業務内容を参考にして作成)

1.「業績達成」項目

 ・店舗売上高目標達成率

 ・店舗粗利益額目標達成率

 ・店舗営業利益額目標達成率

 ・店舗在庫回転率

 ・店舗労働生産性

2.「経営方針達成」項目

 ・3ヶ月先行マーチャンダイジング計画の作成と実施

 ・3ヶ月先行販促計画の作成と実施

 ・新カテゴリー商品の開発

 ・部下の指導・育成

3.「技能・知識・情意」項目

 ・販売計画の作成

 ・店舗内外の清掃

 ・商品の陳列

 ・販促物の作成

 ・商品発注と在庫管理

 ・接客

 ・明るい店舗づくり

 ・身だしなみ

 ・積極性

 

  

「業績達成項目」については、営業部門や生産部門は項目を選びや

すいのですが、人事部門や経理部門などの管理部門では選定がむず

かしいと思っておられる方も多いかもしれません。

 

 

私の場合は、管理部門にも

「全社売上高目標達成率」

「全社粗利益額目標達成率」

「全社経常利益額目標達成率」

などの業績項目を導入しています。

 

 

なぜなら、管理部門は営業部門や生産部門などのライン部門をお客

様として、彼らの業績向上を支援する部門であるからです。

 

 

ですから、管理部門の社員にも、自分たちの部門は会社の業績を向

上させるための部門であり、業績が上がらなければ、給与や賞与も

上がらないことを理解してもらわなければなりません。

 

 

「業績達成項目」、「経営方針達成項目」は経営計画の内容を実行す

るための項目です。経営環境の変化のスピードが年々早まる中、経

営計画を毎年作成することに対応して、これらの項目は毎年見直し

をしていかなければなりません。

 

 

「技能、知識、情意項目」は、その職種・等級に必要な技能や知識、

それに情意(やる気)を規定しています。

 

 

この項目は、ことの性質上、毎年変えるべきものではなく、必要に

応じて変えていくべき項目です。

 

 

このような考えに基づいて人事評価項目を設定すれば、人事評価表

は経営方針を早期に浸透させるツールになり、しかも職種・等級ご

とに具体的な能力開発メニューを提示し、給与や賞与の公平な判断

基準を示すツールにもなります。

 

 

まさに人事評価表は経営のバックボーンです。

 

 

 

■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

経営のバックボーンとなる人事評価制度

8.人事評価項目の定義づけと評価内容を決定する

■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

 

職種・等級別に評価項目が決まれば、その定義づけと評価内容を検討

しなければなりません。

 

 

例えば、「マーチャンダイジング」という評価項目を設定し、次のよう

に、定義づけと評価内容を決定しました。

 

 

【評価項目】

 マーチャンダイジング 

【定義】

 3ヶ月先行のマーチャンダイジング計画の作成と実施

【評価内容】

●0ランク

 自力でマーチャンダイジング計画を立てることができず、3ヶ月先

 行で実施することができなかった       

●1ランク

 上司のアドバイスを受けながらマーチャンダイジング計画を作成す

 ることができ、ほぼ3ヶ月先行で実施できた     

●2ランク

 自力でマーチャンダイジング計画を立てることができ、3ヶ月先行

 で実施することができた       

●3ランク

 顧客ニーズをとらえたマーチャンダイジング計画を3ヶ月先行で立

 て、実行することができた     

●4ランク

 顧客ニーズを的確にとらえたマーチャンダイジング計画を3ヶ月先

 行で立てて実行し、業績向上に貢献した

 

 

まず、評価項目の定義づけですが、その項目を設定する目的を明確に

しなければなりません。

 

 

つまり、どんな行為を行ってもらいたいのか、またその行為によって

どんな効果を期待するのかを明らかにすることです。

 

 

定義はその項目によって実現したいゴールをイメージできる表現にし

て下さい。これがぼやけてしまうと、評価がぶれてしまいます。

 

 

「マーチャンダイジング」の定義を「3ヶ月先行のマーチャンダイジ

ング計画の作成と実施」としたのは、新商品の導入や品揃えなどのマ

ーチャンダイジングを3ヶ月先行で計画・実行し、売上向上につなげ

てもらいたいというゴールをイメージしているのです。

 

 

定義づけがしっかりすれば、

「0.自力でマーチャンダイジング計画を立てることができず、3ヶ

 月先行で実施することができなかった」、

「1.上司のアドバイスを受けながらマーチャンダイジング計画を作

 成することができ、ほぼ3ヶ月先行で実施できた」、

「2.自力でマーチャンダイジング計画を立てることができ、3ヶ月

 先行で実施することができた」、

「3.顧客ニーズをとらえたマーチャンダイジング計画を3ヶ月先行

 で立て、実行することができた」、

「4.顧客ニーズを的確にとらえたマーチャンダイジング計画を3ヶ

 月先行で立てて実行し、業績向上に貢献した」

といった具合に、評価内容も明確化になります。

 

 

評価内容は5段階にしています。

 

 

この場合、

0は「できない」、

1は「あまりできない」、

2は「普通」、

3は「ある程度できる」、

4は「できる」

というレベルになります。

 

 

5段階評価の場合、3の「普通」を入れると、どうしても3が多くな

ります。それを避けて、評価を明確にしたいのであれば4段階評価に

すべきです。

 

 

この場合は、

1は「できない」、

2は「あまりできない」、

3は「ある程度できる」、

4は「できる」

になります。

 

 

4段階評価では、2か3かで非常に迷うことがあります。評価が甘め

の人は3、辛目の人は2をつける傾向が強くなります。

 

 

このように4段階か5段階かはそれぞれ一長一短がありますので、自

社に合った方式を選択して下さい。

 

 

会社によっては、評価レベルを1、2,3,4、と規定するだけで、そ

の内容を記入していないものがあります。

 

 

しかし、それでは評価者によって評価基準がバラバラになってしまいま

す。やはり、それぞれの評価レベルごとにその内容を明確にして、評価

基準の統一をはかることが必要です。