最終更新日 2025年8月28日
お店の新しい門出を祝う、開店祝いのお花。
その中でも、ひときわ凛とした“静かな存在感”を放つ女王、それが胡蝶蘭です。
開店直後の華やかな店先で、その美しい姿は訪れる人の目を惹きつけ、お祝いの気持ちを何よりも雄弁に語ってくれますね。
こんにちは。
都内で花屋を営んでおります、オーナーフローリストの藤井 彩花と申します。
花業界に携わり20年以上、特に胡蝶蘭とは長い付き合いで、毎年300鉢以上をお客様のもとへお届けしています。
そんな花屋の現場では、お客様からこんなご相談をよくいただきます。
「開店祝いには、3本立ちと5本立ち、どちらが良いのでしょうか?」
「お店の規模に合うサイズが分からなくて…」
そのお気持ち、とてもよく分かります。
せっかく贈るなら、相手に心から喜んでもらえて、お店の格も上がるような一鉢を選びたいですよね。
実は、胡蝶蘭選びの“正解”は、一つではありません。
贈り先の「お店の規模」や「設置スペース」、そして「どれくらいの期間、美しく見せたいか」によって変わってくるのです。
この記事では、20年以上の経験を持つプロの視点から、開店祝いに最適な胡蝶蘭の「サイズ」と「本数」の選び方を徹底解説します。
価格の目安や失敗しないためのマナー、そして届いた胡蝶蘭が一日でも長く咲き誇るための初期ケアまで。
この記事を読み終える頃には、あなたも自信を持って、最高の胡蝶蘭を選べるようになっているはずです。
目次
まず結論:贈り先の「規模×設置スペース×露出期間」で選ぶ
お忙しい方のために、まずは結論から。
プロが現場で胡蝶蘭を選ぶ際の基準を、こちらの判定表にまとめました。
判定表(小規模/中規模/大規模 × カウンター/エントランス/ロビー)
贈り先の規模 | 設置スペース | 推奨サイズ・本数 | 特徴・ポイント |
---|---|---|---|
小規模 | カウンター上 | ミディ 3本立ち | 高さ50-70cm程度。圧迫感がなく、お客様の目線に優しく映ります。 |
(カフェ/サロン等) | 店頭の省スペース | 大輪 3本立ち | 高さ約80cm/幅約50cm。店の顔として、外からの視線を集めます。 |
中規模 | エントランス横 | 大輪 3本立ち (42輪~) | 高さ約80cm/幅約50cm。輪数が多いとより華やかに。 |
(クリニック/店舗) | 受付横の床 | 大輪 5本立ち | 高さ約80cm/幅約65cm。格調高い雰囲気で、信頼感を演出します。 |
大規模 | 広々としたロビー | 大輪 5本立ち (60輪~) | 高さ約80cm/幅約65cm。空間に負けない圧倒的な存在感。 |
(ホテル/ショールーム) | 複数並べて設置 | 大輪 7本立ち以上 | 空間全体を豪華に彩り、オープニングイベントを盛り上げます。 |
露出期間別の輪数・つぼみ比率
さらに、「どれくらいの期間、美しく見せたいか」も大切なポイントです。
- 2週間だけ、とにかく華やかに見せたい場合
- 満開に近い、開花している花の割合が多い鉢を選びましょう。
- 1〜2ヶ月、長く楽しんでほしい場合
- 全体の輪数が多く、つぼみが全体の2〜3割ほど残っている鉢がおすすめです。
環境が良ければ1〜3ヶ月も咲き続けてくれる胡蝶蘭だからこそ、この視点が喜ばれる秘訣なのですよ。
サイズの基礎:大輪・中輪・ミディの違いと“見栄え”の物理
胡蝶蘭には、花の大きさによって主に3つのサイズがあります。
それぞれの特徴を知ることで、設置場所にぴったりの一鉢を選べます。
花径・全高・幅の目安
1. 大輪(たいりん)
花の直径が10〜15cmほどもある、最も豪華で一般的なサイズです。
全体の高さも80cm以上になることが多く、開店祝いのスタンダードと言えます。
広いエントランスやお店の前に置くと、その場が一気に華やぎ、写真映えも抜群です。
2. 中輪(ちゅうりん)
花の直径が7〜8cmほど。
大輪の豪華さと、次に紹介するミディの飾りやすさの、ちょうど中間くらいのサイズ感です。
クリニックの受付や、少しコンパクトな店舗のエントランスなどに品良く収まります。
3. ミディ
花の直径が5〜6cmほどの、可愛らしいサイズです。
高さも50〜70cm程度とコンパクトなので、受付カウンターの上や棚の上など、限られたスペースにも飾りやすいのが魅力です。
“輪数”の読み方(表示ルールの注意)
そして、もう一つ知っておきたいのが「輪数(りんすう)」です。
これは1本の茎についている花の数のことで、多ければ多いほど豪華に見え、価格も上がります。
お店によっては「つぼみを含む輪数」で表記している場合もあるので、購入時に確認すると安心ですね。
本数の意味と使い分け:3/5/7本立ちは何が違う?
次に、多くの方が悩まれる「本数」についてです。
これは、一つの鉢に何本の茎が立っているかを示します。
3本立ち・5本立ち・7本立ちの“存在感”比較
1. 3本立ち
開店祝いにおいて、最もスタンダードで選ばれることが多い基本のスタイルです。
個人・法人問わず、どんなシーンにも対応できる万能さがあります。
迷ったら、まずこの3本立ちを基準に考えると良いでしょう。
2. 5本立ち
3本立ちよりもさらにボリュームがあり、式典のような特別感を演出できるのが5本立ちです。
特に大切な取引先の開店祝いや、広いスペースを持つお店への贈り物として選ばれます。
その存在感は、まさに圧巻です。
3. 7本立ち以上
ホテルのロビーや広いショールームなど、大きな空間を彩るための特別な一本です。
他のお祝い花の中でも埋もれることのない、圧倒的な豪華さを誇ります。
奇数が選ばれる文化背景と例外
日本では古くから、割り切れない奇数は「陽数」とされ、縁起が良い数字と考えられてきました。
そのため、お祝い事では3本、5本、7本といった奇数が選ばれるのがマナーとなっています。
もちろん、カジュアルな間柄であれば、偶数本がマナー違反ということではありませんよ。
価格と相場:本数×サイズ×輪数でこう変わる
胡蝶蘭の価格は、主に「サイズ(大輪など)」「本数」「輪数」の3つの要素で決まります。
関係性やお店の規模に合わせて、最適な予算を考えましょう。
本数別・相場の早見(1/3/5/7本立ち)
本数 | グレード(輪数の目安) | 価格帯の目安 | 主な用途 |
---|---|---|---|
3本立ち | スタンダード (36輪~) | 20,000円~30,000円 | 親しい友人、個人店、一般的な取引先 |
プレミアム (42輪~) | 30,000円~40,000円 | 特に大切な取引先、華やかさを出したい時 | |
5本立ち | スタンダード (60輪~) | 30,000円~60,000円 | 大企業、大型店舗、特別な式典 |
プレミアム (70輪~) | 50,000円~ | 企業の周年記念、盛大なオープニング | |
7本立ち | (80輪~) | 70,000円~ | 非常に広い空間、特別な関係性 |
3本=36輪~/5本=60輪~の“グレード”感覚
輪数が多ければ多いほど、花の密度が高まり、豪華な印象になります。
例えば同じ3本立ちでも、36輪と42輪では見た目のボリューム感が大きく変わってきます。
予算内でワンランク上の印象を与えたいなら、輪数の多いものを選ぶのがプロのテクニックです。
マナーと立札:誰からか一目で伝わる書き方
お祝いの気持ちをきちんと伝えるために、立札のマナーはとても重要です。
開店直後のお店は多くの人で賑わうため、「誰から贈られた花か」が一目で分かるように配慮しましょう。
連名・役職・文字配置の基本
1. お祝いの言葉(祝詞):「祝 御開店」「御祝」など。目立つように赤文字で書くのが一般的です。
2. 贈り主の名前:会社名、役職、氏名を正確に記載します。
3. お届け先の名前(任意):「〇〇株式会社様へ」のように記載すると、より丁寧な印象になります。
複数人や複数の会社で贈る場合は、役職や立場が上の方から順に右から記載するのがマナーです。
立札とメッセージカードの使い分け
ビジネスシーンでは立札が一般的ですが、親しい友人へ個人的に贈る場合は、メッセージカードを添えるのも素敵ですね。
心のこもったメッセージが、お花と一緒ならより一層伝わります。
配送・設置・初期ケア:最初の7日で“持ち”が決まる
せっかく贈った胡蝶蘭、一日でも長く美しく咲いていてほしいですよね。
実は、届いてから最初の1週間のケアが、その後の花持ちを大きく左右します。
贈り先の方に、ぜひ以下のポイントを伝えてあげてください。
置き場所NG/OKチェック
- OK ✅:直射日光の当たらない、明るく風通しの良い室内。人が心地よいと感じるリビングのような場所が最適です。
- NG ❌:エアコンの風が直接当たる場所、直射日光が当たる窓辺、寒すぎる場所。
水やり頻度と鉢サイズ別の目安
胡蝶蘭は、水のやりすぎで根腐れしてしまうことが一番多いのです。
- 頻度:鉢の中の植え込み材(水苔など)の表面が、完全に乾いてからあげます。目安は7日〜10日に1回程度です。
- 量:株元に、コップ1杯程度のお水をゆっくりと与えます。
- 重要:受け皿に溜まった水は、必ず捨ててくださいね。
この初期ケアをしっかり行うだけで、胡蝶蘭は1ヶ月、長いものだと3ヶ月以上も美しい花を咲かせ続けてくれます。
プロの見抜き方:良い株は“ここ”を見る
最後に、私が仕入れの現場で良い胡蝶蘭を見抜くときのポイントを、こっそりお伝えしますね。
もしご自身でお花屋さんに見に行く機会があれば、ぜひチェックしてみてください。
仕入れ眼:花姿・蕾比率・葉と根の充実
- 花姿:花が同じ方向を向いて、美しく整然と並んでいるか。
- 蕾の比率:これから咲く楽しみがある、硬くしっかりとした蕾がいくつか付いているか。
- 葉と根:葉にツヤと厚みがあり、生き生きとしているか。鉢の外から見える根が、みずみずしい緑色や白色をしているか。
良い株は、生命力にあふれています。
細部までこだわって選ばれた胡蝶蘭は、贈る方の丁寧な気持ちまで伝えてくれるはずです。
写真映え・動線・撤収の現場実務
お店に納品する際は、ただ置くだけではありません。
入口から入った時のお客様の動線を邪魔しないか、背景の色と花の色の相性は良いか、そして写真撮影の際に最も美しく見える角度はどこか、といったことまで考えて設置します。
贈る際には、こうした現場の視点も少し想像してみると、より良い選択ができますよ。
ケース別シミュレーション
これまでのポイントを踏まえて、具体的なシーンごとにおすすめの胡蝶蘭をシミュレーションしてみましょう。
①路面カフェの開店祝い(10坪・人通り多)
- 推奨:大輪 3本立ち(36〜42輪)、色は定番の白。
- 理由:お店の顔として、道行く人の目を惹きつけます。白はどんな内装にも馴染み、清潔感と上品さを演出。写真映えも考慮して、華やかな大輪がおすすめです。
②クリニックの移転祝い(受付カウンター)
- 推奨:ミディ胡蝶蘭 3本立ち、淡いピンクや黄色のラッピング。
- 理由:カウンターの上という限られたスペースでも圧迫感のないミディサイズが最適。患者さんの心を和ませるような、優しい色合いが良いでしょう。
③ショールームのグランドオープン(大型ロビー)
- 推奨:大輪 5本立ち(60輪以上)。
- 理由:広い空間に負けない、格調高いボリュームが必要です。企業の信頼性や今後の発展を願う気持ちを込めて、見栄えのする豪華な一鉢を選びましょう。
よくある質問(FAQ)
Q: 開店祝いは3本と5本、どちらが“正解”ですか?
A: どちらも正解ですが、用途で使い分けます。一般的なお祝いには幅広く使える「3本立ち」、特に重要な取引先や広い店舗には、より豪華な「5本立ち」がおすすめです。
Q: 価格の目安はどれくらい?
A: 一般的な3本立ちで2〜3万円、5本立ちで3〜6万円が目安です。輪数(花の数)によっても価格は変わります。
Q: “輪数”はどれを基準に選べばいい?
A: 3本立ちなら36輪以上、5本立ちなら60輪以上あると、見栄えがして立派な印象になります。長く楽しんでほしい場合は、つぼみが多めのものを選ぶと良いでしょう。
Q: 奇数が良いと聞きます。本当ですか?
A: はい。日本では割り切れない奇数が縁起の良い「陽数」とされ、お祝い事では3本、5本、7本立ちが好まれます。
Q: 立札の連名や役職の並びは?
A: 役職や立場が上の方から順に、右から記載するのが基本マナーです。
Q: 置き場所とお手入れのコツは?
A: 直射日光とエアコンの風を避けた、明るい室内に置いてください。水やりは7〜10日に1回、表面が乾いてから。受け皿の水は必ず捨てることが、長く楽しむ秘訣です。
まとめ
開店祝いの胡蝶蘭選びは、もう迷いませんね。
最後に、大切なポイントをもう一度振り返ってみましょう。
- 選び方の基本は「贈り先の規模 × 設置スペース」で考える
- 長く楽しんでほしいなら「つぼみ」が残っている鉢を選ぶ
- 迷ったら、基本の「大輪3本立ち」を基準にする
- ワンランク上を目指すなら「輪数」にこだわる
- 立札マナーを守り、お祝いの気持ちをきちんと伝える
- 最初の7日間の「初期ケア」が花持ちを左右する
胡蝶蘭は、ただ美しいだけの花ではありません。
その場を明るくし、見る人の心を癒し、そして何よりも、贈る方の「おめでとう」という温かい気持ちを、静かに、そして長く伝え続けてくれる特別な存在です。
この記事が、あなたの心からの祝福を届ける、最高の一鉢を選ぶお手伝いができたなら、花屋としてこれほど嬉しいことはありません。